2009年4月21日

物語の最後が近づいてくると、途端に読むスピードが遅くなる(目で文字を追う速さではなく、よし読もうと本を開く回数のこと)。ビデオに撮ってあるドラマの「奇跡の人」も、テレビで見たことがあるし何度も繰り返し見て結末は知っているのに、最終回をなかなか見る気分になれない。どんなに素晴らしい終わり方でも、もう先がないという事実が、つらい。こんなにすきな世界なのに、先が無い。次のページやシーンは絶対に現れない。これが、人生とは違うところだ。生きていると、当然、分かりやすく言えばいいことや悪いことが起こって、こんなにも苦しい、悲しいとか、自分だけで抱えきれないほどの幸福を感じるとき(あるいは年月)がある。でもそのひとつひとつ、ある一定の期間では区切れない。どんなに綺麗な思い出ができても、次の日に財布を落としたり、正しいことをしているのに馬鹿をみたりすることだってある。人の時間は繋がっていて、映画や物語のように次の場面が絶対に現れないということを実感することがない(死は、実感とは正反対であるからこれに当てはまらない)。でもこれは、自分が当分のあいだ、かなり長い期間生きているという、前提での話だ。