2010年7月29日

ブランドンのこと

ブランドン

自分はそのとき小学生で家の中では毎日嫌なことが起こっていて、思い出さないようにしていたら思い出さなくなった。ただあの頃の空気は憶えていて、今のそれと違いもっと軽かった。もっと単純で、今では簡単にできるようなことができなかった。インターネットがあったのか知らないが、今ほどゴミ同然の情報はなかったはずだ。苛立つ人も少なかった。もっと空気が軽く、今でこそ不便だと思うようなことであふれていたが、不便なことはなかった。本当はない。なくても構わないものばかりだ。ゴミみたいな世界で生きている。ブランドンは死んだ。彼の死んだ家を見たときに、自分が憶えているあの頃の世界と同じ気がした。そして自分はその頃に戻りたいと思っている。