2010年10月25日

「午前3時20分で、眠れないまま入っていたベッドから起き上がり12階の部屋から外を眺めている。彼女の描く絵のような、暗い境界線がある。森の向こうに大きなマンションがあるようで、黒い塊のようになっている。誰かまだ起きていて電気がひとつ点いている。起きているなら、僕と話をしてくれないか。彼女の描く絵のように、見えない向こうに何か明るい建物があるらしく、そこだけ境界線がはっきり見える。電気が雲に反射している。なんと美しいのだろうか。伝えたくても、今僕のそばに話す相手が居ない。外を眺めている間に、下の駐車場から車が2台出て行った。どんな人だったのか、見ていない。ホテルの仕事が終わって家に帰るのだろう。家にかえる。嘘のように、いま、マンションに点いていたひとつの明かりが消えて、そのすぐあとに、境界線をはっきりとさせていた、見えない向こうにある電気が消えた。消えてほしくないものも、自分の知らないうちに消えていく。消えずに変わるものもあるけれど、元には戻らない。彼女は最近絵を描いていない。それしかないのに、描いていない。どうしたら元気になってくれるだろうか。午前3時56分。」