2011年7月2日

映画「ほとけ」を観たのは十年前か。当時自分は高校生で、新宿のシネマスクエアとうきゅうに観に行った。平べったい劇場で、観やすい環境ではないのだけれど、あの古びた感じが、自分には新鮮だったというか、映画の愉しみみたいなのが分かった気がした時間だった。そこで観たのが「ほとけ」だったから、というのもあるかもしれない。「ほとけ」は、一見、どんな時代背景だか分からないように思えるけれど、あれは紛れもない現代で(分かりやすい例を挙げると、携帯電話が出てくる)、若者が持っているやり場のない感情に焦点を当てている。それが観ていて苦しかった。同時に美しいのだけれど。自分より少し先を生きているその映画の中の若者たちに、漠然と自分のすぐ先の未来を被らせて観たりもしていた。あのライのようにただ一人の女を心の底から欲することがこの先あるのだろうか、シバのように怒りを暴力に任せて文字通り人を傷つけることがあるだろうか、ユマのように絶望を知りながらも美しくあることができるだろうか。人に映画をすすめるときに「ほとけ」を挙げることはないが、忘れられない、大切な映画だった。