蓮沼海浜に行った。
海までは車で50分くらいかかる。
ステレオで音楽をかけながら運転するのはすきだ。
夕方から日が落ちるまで居た。
「思ったより寒くないな。」と、波打ち際を南に向かってしばらく歩いたのだけれど、ものの数分で骨の芯まで冷えきってしまった。
でも、冷たい空気が体の中に入ってくるのは心地よい。
感覚のなくなった手で、写真を撮りながら歩いた。
夕暮れ時は景色の色が刻一刻と変化していき、それを見逃したくなくてそこから動けなくなる。
自分のほかには誰も居なかった。
ときどき海面ぎりぎりをハクセキレイの群れがスピードを上げて飛んでいくだけで、それを見て、一瞬自分がそのなかの一羽になって飛んでいるような感覚になった。
波の音はいつまでも聞いていられる。
海を眺めていると、波の音を聞いていると、その間は何も考えなくてすむ。
年明けに、もうここには居たくないと思うことがあり、逃げるように海へ向かった。
いつもはしばらく海を眺めていると落ち着くのだけれど、この日は気持ちが落ち込んだまま帰った。
海岸から車へ戻るとき、海が見えなくなったあとも波の音だけは聞こえてくる。
それに後ろ髪引かれながら、聞こえなくなるまで耳を澄ましていた。
いつか、この場所で夜の海を見てみたいと思う。