2015年5月11日

お昼前に部屋に戻ってきた。
普段、明るいうちに部屋に戻ってくることはほとんどないので、こういう日は、目に入るすべての景色が眩しくて、この世界の美しさにすこし目が回る。
空は青く高く、まだ日に焼けていない木々の葉は緑が鮮やかで、建物の屋根や壁までも、光で輝いて見える。
歩きながら空を見上げると、向こうの方に、できてしばらく時間が経った飛行機雲が走っていた。
長く、輪郭がぼやけて波打っていて、龍の骨はこんな感じだろうな、と思った。

この世界の美しさに、目が回る。
日は昇って沈み、風は吹いて、花は咲く。
夜空には月が浮かび、満点の星が毎晩輝く。
重い曇り空や嵐でさえ、本当は美しいものなんだよ。

自然からしてみればなんてことはない、誰のためでもなく、ただ世界は美しく、残酷を繰り返す。

海が、
海がすきだ。
海はいつまでも見ていられた。
波の音はいつまでも聴いていられた。
どこからともなく泣きたい気持ち。


自分が死んだあとも、そういう世界の美しさは繰り返されていくんだろう、と思う。
朝日は眩しく、花は咲き、夕暮れは一日の中でもっとも多く色が移り変わり、夜空には星が輝く。
居なくなったあとも、何も変わらず繰り返していく。
誰のためでもなく、ただそれだけだ。

そういう世界のなかで、生きていた。