8月に、行って来た。
どんな町なのか知りたくて。
どんなふうに時間が流れて、どんな空気なのか、肌で感じたかった。
本当は冬に行きたかったのだけれど、
だいたい地理は掴めた。
全部で800kmくらい移動していて、写真を撮ったりした。
お店の人とすこし話をして、「この町は冬が綺麗ですよ。」
やはりそうか。
「特に何があるってわけではないけど、良い町です。」と。
それ、とても豊かなことだと思う。
一日中車で出掛けて、日暮れに町に戻ってくる、
夜は町を散歩した。
8月なのに夜は気温がかなり下がり、
夜更けでないものの人がほとんど居らず、
姿は見えない。
姿は見えなくても、声が頭上を移動していくのが分かった。
滑空しながら鳴いている。
あのときの感覚。
あの夜道に感じた、空気の冷たさ、風の匂い、
いま自分は本当にこの町に居るんだという誇らしさにも似た歓び、
消えない傷のような、記憶になった。
忘れない。
帰ってきてからも、気持ちはどこか上の空で、
夜中、絵を描いているとき、
「今もカモメたちは、あの夜と同じように鳴きながら、
と思う。